南紀おやじバンドコンテスト

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 スペシャルインタビュー

音楽プロデューサー 酒井政利氏 × 作詞家 及川眠子氏

音楽プロデューサー 酒井政利氏 × 作詞家 及川眠子氏

---南紀おやじバンドコンテストを支援していただき、ありがとうございます。
酒井) やっぱり郷里というか、和歌山出身だから愛着がありますよね。まず「おやじバンド」いうのはいい企画だと思いました。どこか少し(人生を)振り返りながら楽しんでいく、という…。人間、年齢を重ねていくと、適度な緊張感の中でそれぞれ楽しむ、というのがいいんですよ。(ステージでの演奏は)緊張するでしょうが、そういう適度な緊張感の中で、楽しみながら発表する場を持つことは一番充実感があると思いますね。我々審査する側も、それを見ることによって緊張もするし、楽しめるのですよ。
及川) 和歌山ってなんか音楽が育たないものがありますね。実際、音楽業界には和歌山出身者が少 ない。たとえば福岡や北海道、沖縄でも音楽が育つのに、なんで和歌山は育たないのだろうという疑問が(私の心の中に)あって。そういう土壌は、地域の音楽に対する力がないと育たなんですね。もっと、和歌山から音楽家が生まれていってくれればと思います。
音楽業界って演歌歌手は別として、田辺から上(北部)の方しかいないでしょ。和歌山は出版業界が多い。中上健次や津本陽、佐藤春夫がいたりというベースがあるから、出版社が育っているのだと思います。音楽も誰かがいればそこから育っていくはずです。
酒井) 静岡や四国は、和歌山と(県民性が)似ています。みかんのできるところはゆるいというかおだやかなところがあります。音楽は北海道や九州のように荒さも必要かも知れないですね。起伏というのかな。風土だと思いますよ。和歌山は住み心地がいいのだと思う。パンダも喜んでいるんじゃないですか(笑)。
---スタッフの熱い思いは伝わっていますか?
酒井) 居心地はいいですよ。みなさんの配慮が伝わるから。和歌山の人って配慮深いんじゃないかな。
及川) 気を遣ってくれますね。
酒井) どっちかというと東京ではあまり遣わないでしょ。
及川) ビジネスライクですね。やっぱり慣れてるから。和歌山はやはり田舎だからじゃないですか。
酒井) 大阪はビジネスライクだけど、妙に作った気を遣うよね。和歌山はやはり配慮深さを感じるし、居心地がいいですよ。私、一番感受性の強いときに和歌山にいましたから、風土の中にとけ込んでいる面もあると思うんですよね。
---過去2回の振り返りと、第3回に期待することをお聞かせください。
酒井) 私ね、反省しているのは、もうちょっとあったかい目で見てあげるべきだったかな、と思うんですよ。というのは、彼らにとって、その場は大変な緊張をしているんですよね。その辺を割り引いて、あったかい目で見て審査してあげたいな、と思いますね。生死を分かつんじゃないですから。
及川) 基準がつけにくいんです。プロをめざしているわけでもない。プロだったらはっきり切っちゃえるんですよ。この子は売れない、とか。そうじゃなくてアマチュアの中で一番を選ぶ、となるので、やはり難しい。
酒井) 及川さんの隣に座って見ていると、実に(コメントが)上手い。大根を切っているようで、ちょっと残すんですよね(笑)。切られているほうも気持ちよく終わっていると思いますよ。
---まだまだ続いている「おやじバンドブーム」について
酒井) この前、「こまどり姉妹がやつてくる ヤア!ヤア!ヤア!」という、こまどり姉妹のドキュメントの映画が封切られたんですね。すごい反響でしたが、そのドキュメントの中に懐かしい“昭和"が見えてくるんですね。そういう強みがあるんです。おやじバンドもそういう意味でまだまだ続くと思います。おやじバンドの向こうに“昭和"がしっかり据わっているから。それだけ昭和に思い入れている人が多い。やっぱり人の時代だったんですね。平成に入って、生活やモノが機械化してデジタル化しているんです。おやじバンドってどなたが考えたのか、実にあったかいネーミングだと思う。誰が考えたんでしょうね(笑)。おやじが出てくるから「おやじバンド」、シンプルだけど言い得ていますね。
及川) (バンドというのは)昔は若い子がやるものと言われていて、そこで就職かバンドかという選択をせまられて、俺はプロになるの無理だから、田舎に帰ろうとか、結婚して普通の仕事に就こうと思って(音楽をあきらめた人たちが)、生活もゆとりができて、子供も手を離れて、気がついたら、まだ矢沢永吉が頑張っているし、桑田佳祐もみんな頑張っている。吉田拓郎も還暦過ぎてがんばっている。「あっ!できるんじゃん」という。
酒井) そういう人たちが帰ってきているんですね。
及川) ものすごい高いキダーを買うらしいですよ(笑)。
酒井) だからいい意味で代え難い幸せを持っている人たちだと思います。ちょっと懐かしいことをするのは体にいいと思う。眠っていた細胞がくっくっと起きるんだと思うんですよ。だから誰もが初恋で好きだった人に互いにおじいさんおばあさんになって会うとふっと“どきっどきっ"となるんだね。懐かしむって不思議な現象だと思いますよ。幻を追うようなものですね。幻を追っているようでも、何ものにも代えられない楽しみがあるんだと思う。我々は審査していてもそういう世界にぽっと入れるからね。
---応募者にメッセージ、応援のエールをいただきけますか
酒井) 及川さんから、あったかい言葉で…。
及川) 「ぜひ続けていってください」ということですね。音楽は続けることが楽しいと思う。
酒井) ホントそうですね。参加することに意味があるみたいな。
及川) 市民ランナーみたいな感じですね。市民ミュージシャン。ぼけ防止にもいい。
酒井) 市民ランナーっていい言葉ですね。まさにバンドの道をゆくランナー。楽しむことによって日常生活が充実していくと思うんですよ。老け込むとは止まることだからね。

音楽プロデューサー 酒井政利氏 × 作詞家 及川眠子氏

---このイベントの将来像として期待するものは?
酒井) 5回、10回記念あたりで、ネットとかを活用して競い合うようになったら、おもしろいと思いますね。
及川) あとやっぱり音楽の土壌というものを和歌山で作るきっかけになってほしい。それを若い子たちが見て、「あっバンドっていいな」と思って楽器始めて、歌始めてそこからデビューしていくとかね。
酒井) そういう意味でも、5回、10回記念の時におやじバンドに、おやじの息子バンドみたいなを入れていく、広げていくというのもいいかも知れません。
及川) 私は福岡のライブハウス「照和」みたいな存在になればいいと思う。
南紀からいろんなアーティストを輩出する。それこそ「昭和(照和)」ですね。(笑)
---プロデュースするという観点からバンドのみなさんにアドバイスをお願いします。
酒井)  今出てくる方はみんなプロデュース心があるんですよ。今の生活の中でプロデュースという言葉は偏った言葉のように響くかも知れないけれど、本当に必要なことなんです。子どもの教育にしても、夫婦や親子の間でも、プロデュースというのは大事なことです。出演する人は去年こういう失敗したから今度こうしてみよう、というところの自己改革ですね。みなさんはそのプロデューサーだと思います。我々のやってるプロデューサー業は他の人を持ち上げるという改革をするのですが、出場者たちは自己改革ですよね。今はそういう時代かもしれない。まずは自分が楽しまないといけない時代に入ったのだと思いますよ。楽しむことをプロデュースして、生活が充実していけばいいわけですよ。ただ、楽しみすぎて迷惑かけるのはだめですよ、きっと。
---今年はオリジナル曲が多いのですが、その歌詞について期待するものは何ですか?
及川) それはやっぱり「プロにはない視点」ですよ。すごく普遍的な彼らの日常がそこから見えてきたらおもしろいなと思います。それで私も触発されるし。
酒井) 本当に歌のいいのは、言葉がいいんですよね。だから優先順からいうと詞が大事なんですよ。曲は2番目なんですよね。ヒット曲はメロディだけが耳に入るから良い曲だと思うんだけど、実は言葉が残るんですよね。及川さんなんか聞いてて一番気になるでしょう。
及川) 本当にいい歌手のいい言葉に乗せている歌というのは、周りうるさくても聞こえてくるんですよ。不思議なことに。
酒井) 突き抜けるんだな。
---南紀は、東京からどう見えますか?どうしたら活性化すると思いますか?
酒井) 個人的には(南紀は)よくがんばっているなと思う。高速道路も必要があってやっているんでしょうが、利便さによって負けることも多いと思うんですよ。それよりも南紀のよさをうっかりすると忘れてしまうと思うんですよ。それを観光面で強調していく。小さなことを大事にしていくということを重ねていくことがいいと思います。東京からみると南紀のよさってすごくありますよ。
及川) 今は人の考えも変わってきていて、農業をやりたいという人が増えたり、セカンドライフは田舎で、とかいう人が多い。まず(そこに)住んでいる人がいないと、町って活性化していかない。その人を呼ぶ力って結構、風土だったりもするけど、文化の力ってあると思うんですよね。和歌山には文化にお金かける意識がまだまだ足りないと思う。形が見えないので、どうしたらいいか、いくらかけていいかわからないんですね。
酒井) 及川さんが言ったように、田舎に帰って土を触りたいという人がいるんですよね。利便さに負けているというか、辟易している。東京は乾燥してるというのかな。そういう意味では、南紀は適当な湿り気を感じますよね。乾燥に対する湿り気をなくさないようにすることと、さりげない文化=伝統を見失わないようにしなくちゃいけない。
及川) 和歌山って、歳を取ってからも、ものすごく住みやすいと思うんですよ。温暖だし、食べるものおいしいし。魚と野菜がおいしくて、もう肉なんか食べたくない(笑)。温泉あるし。
酒井) 本当、そうかもしれない。いつも、おやじバンドの帰りにお墓参りに行くんだけれど、風土が好きだからですよ、田舎の。疲れがとれますよ。
酒井) 私は今住んでいる善福寺というところに移ってから4年半になりますが、土地に惚れて買ったんですね。この間、気が付いたんです。風景がどこか和歌山に似ているんだ、って。石ころ積んだところがあって、田舎のお屋敷っていうのが何軒か続いているんです。実は和歌山からだいぶ刷り込まれていたのですね。
和歌山は欠点を直すのではなく、見直したらいいんです。人間でもそうですが、コンプレックスのところをうまくカバーしてあげると伸びるんです。もしかしたら場所もそうかも知れない。南紀は「こういうところが田舎くさい」とか言われているところを大事にしたらいいと思う。
及川) 変にしゃれたものを追いかけないでね。
酒井) それにしてもいいところですよ、南紀は。毎月おやじバンドやってくれてもいい(笑)。
及川) (音楽の土壌づくりに)AKB48みたいなのを和歌山で作ったらどう?
酒井) 将来のタレント発掘にもつながっていきますからね。
及川) 今では配信という手があるから、そんな大変なことじゃないですよ。
酒井) 及川さんを本部長にしてやったらいい(笑)。
(そのような文化の企画を)最初は小さいことから始めていくといいかもしれませんね。おやじバンドも続けていくことで、そこから何か生まれるはずですよ。

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